スタジオジブリを代表する不朽の名作として、長年多くのファンに愛され続けている宮崎駿監督のアニメーション映画『風の谷のナウシカ』。テレビ放送されるたびに大きな話題となり、歌舞伎化もされるなど、その人気は国内外で揺るぎません。しかし、この感動的な映画の裏には、全7巻にも及ぶ壮大な原作漫画が存在することをご存知でしょうか?
「映画しか見たことがない」という方も多いかもしれませんが、実は映画版と原作漫画では、物語のスケール、キャラクター描写、そして込められたメッセージの深さに、驚くほど大きな違いがあります。
俺も最近知り合いのオタク仲間の方から原作版のナウシカをお借りしまして、「映画と全く違うやん!!」と驚いた次第ですw
今回はこの二つの『ナウシカ』がどのように異なるのか、その魅力に迫ります。
それではいってみましょう✨
※この記事ではネタバレしてますので未読の方はご注意ください。
『風の谷のナウシカ』とは?
『風の谷のナウシカ』(かぜのたにのナウシカ)は、宮崎駿による日本の漫画。アニメーション監督・演出家でもある宮崎が、1982年に徳間書店のアニメ情報誌『アニメージュ』誌上にて発表したSF・ファンタジー作品。
戦争による科学文明の崩壊後、異形の生態系に覆われた終末世界を舞台に、人と自然の歩むべき道を求める少女ナウシカの姿を描く。1984年には宮崎自身の監督による劇場版アニメ『風の谷のナウシカ』が公開された。2019年には歌舞伎化された。
漫画は『アニメージュ』1982年2月号より連載を開始し、映画制作などのため4度の中断期間を挟みながら、1994年3月号にて完結した。1994年に第23回日本漫画家協会賞大賞、1995年、第26回星雲賞コミック部門を受賞。コミックス全7巻の累計発行部数は1780万部を突破している。海外でも8か国語で翻訳・出版されている。2007年の文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門では第8位に選出された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
あらすじ
「火の7日間」と呼ばれる大戦争によって文明が失われ、地球は汚染され、そこから1000年後の世界
この世界では、有毒な瘴気をまき散らす植物で構成された巨大な森「腐海(ふかい)」が大地を侵食し、腐海には昆虫に似た蟲(むし)と呼ばれる巨大生物達が生息する。
菌類は一欠片でも村に侵入を許せば、たちどころに汚染が広がり、菌類が放出する瘴気(しょうき)は、多量に吸い込めば一時も持たず死に至る。衰退した人類たちは瘴気と蟲に怯えながら、錆とセラミック片に覆われた荒廃した世界での暮らしを営んでいた。
腐海の辺境にあるトルメキアと盟約を結ぶ小国「風の谷」の族長ジルは、腐海の毒に侵されて病床にあり、ジルの娘ナウシカが代理で国を治めていた。
原作版とアニメ版の違い
ここから原作とアニメの違いをご紹介したいと思います✨
1. 物語の規模と世界の広がり:映画は「序章」に過ぎない
映画版:シンプルなストーリーラインと限定された世界観
映画版は、風の谷、トルメキア王国、ペジテ市という三つの勢力を中心に展開し、トルメキア軍が略奪した巨神兵が風の谷に墜落するところから物語が始まります。上映時間約117分という制約の中で、ナウシカが腐海の秘密を探りながら、風の谷を守るために奮闘する姿がコンパクトにまとめられています。この映画は、原作漫画のわずか最初の2巻までの内容にほぼ相当する「序章」に過ぎません。
原作漫画:壮大なスケールと複雑な世界設定
一方、全7巻からなる原作漫画は、トルメキア王国と土鬼(ドルク)諸侯国という二大国間の激しい戦争が物語の主軸となります。映画には登場しない「土鬼諸侯国」や「シュワの墓所」など、より広大な世界観と多数の重要人物が登場し、ナウシカの旅を通じて世界の真実に迫る、深遠な物語が描かれます。
2. ナウシカのキャラクター設定:聖女か、葛藤する戦士か
映画版:「聖女」としての純粋なヒロイン
映画のナウシカは、常に優しく、生命を尊重し、争いを止めようと奔走する「聖女」のような純粋なキャラクターとして描かれています。傷ついた王蟲の子を命がけで守り、キツネリスにも優しく接する姿が印象的です。
原作漫画:複雑な内面を持つ戦士的ヒロイン
原作漫画のナウシカは、より複雑で多面的な性格を持ちます。風の谷の族長の「跡継ぎ」としての重責を背負い、時には男性的な言葉遣いをしたり、土鬼の僧正を人質に取るなど、強引な行動に出ることもあります。彼女は「優しさと猛々しさ」を兼ね備え(土鬼の僧正談)、怒りや自己嫌悪、自己犠牲の精神といった人間的な葛藤を抱えながら成長していく姿が描かれています。宮崎監督自身、ナウシカは「耐えがたかったから行動した」と述べ、個人の感情に従った行動を強調しています。
3. クシャナとクロトワ:明確な敵役から複雑な人間ドラマへ
映画版:明確な「敵役」としてのクシャナ
映画では、トルメキア軍の将軍であるクシャナは、ナウシカと対立する「敵役」として描かれ、腐海を駆逐しようとします。
原作漫画:複雑な政治的立場と内面
原作漫画のクシャナは、トルメキア王国内の権力闘争に巻き込まれ、父や兄たちから命を狙われるなど、自身も過酷な状況に置かれています。漫画では、ナウシカとクシャナは同盟関係にあり、時に協力し合う姿が見られます。また、参謀のクロトワも皮肉屋でありながら、冷静な観察眼を持つ現実主義者として、クシャナの戦略を補佐する重要な役割を担っています。彼らには深掘りされたバックボーンと思想があり、単純な善悪では語れない人間味が描かれています。
4. 腐海と王蟲の真実:謎から衝撃的な起源へ
映画版:謎のままの腐海と王蟲
映画では、腐海や王蟲の正体は完全には明かされず、ナウシカが腐海の地下で浄化された環境を発見し、世界を浄化している可能性を示唆するに留まります。
原作漫画:明かされる衝撃的真実
原作漫画では、腐海や王蟲の存在目的が詳細に明かされます。腐海は、汚染された大地を浄化するために旧人類によって計画的に作られたシステムであり、蟲はその腐海を守る存在です。さらに、現代の人類も浄化の過程を見守るために旧人類によって作られた存在であり、浄化完了後には消滅してしまう運命にあるという衝撃的な真実が提示されます。これは、宮崎駿が水俣病から着想を得て、「人間が汚した罪悪を一身に引き受けて生きている」存在としての自然を描いたことと関連しています。しかし、宮崎監督は漫画を描き進める中で、「自然が人間にとって都合の良いものだというのは嘘だ」と考えるようになり、腐海が人間の意図せぬ方向に進化し、人間を排除する独自の生態系を形成していったと見ています。
5. 巨神兵「オーマ」の存在:文明の象徴から「ナウシカの子」へ
映画版:文明崩壊の象徴
映画では巨神兵は過去の戦争の遺物として登場し、一度復活するものの、すぐに崩壊してしまいます。文明の愚かさを象徴するオブジェのような位置づけです。
原作漫画:「ナウシカの子」としてのオーマ
原作漫画では、巨神兵は「オーマ」という名を持ち、ナウシカを「ママ」と呼んで慕う存在として登場します。オーマは物語の結末に大きく関わり、ナウシカは最終決戦でその力を利用するため、母親として接しながらも、心の中では「この子の死を願っている」という複雑な感情を抱えます。また、巨神兵は本来、相手の行動を規制するための人工知能を持った裁判官のような抑制兵器として作られたことも明かされます。
6. 物語の結末:希望か、覚悟の重厚な終幕か
映画版:希望に満ちた和解のラスト
映画版は、ナウシカが王蟲と心を通わせ、風の谷を救い、敵対していたクシャナたちとも和解に至る、希望に満ちた結末を迎えます。「青き衣をまといて金色の野に降り立つ」という預言が成就し、明るい未来が示唆されます。宮崎監督自身は、このキリスト教的な「奇跡」の結末を「宗教画になってしまった」と表現し、本意ではなかったと語っています。
原作漫画:重厚で複雑な終幕
原作漫画の結末は映画とは大きく異なります。ナウシカは「シュワの墓所」の主と対決し、巨神兵オーマの力を使って墓所を破壊します。これは旧人類が計画した「浄化された世界」ではなく、腐海と共に生きる道を選択するナウシカの姿を描いています。映画のようなハッピーエンドではなく、「どんなに苦しくとも」生きていく決意を示す、希望と覚悟が入り混じった重厚な結末となっています。
7. テーマの深さ:多層的な問いかけと倫理的ジレンマ
映画版:環境保護と反戦のメッセージ
映画版は、環境保護と反戦というメッセージをシンプルかつ力強く提示しています。宮崎監督は1980年代前半の冷戦や環境汚染といった危機的な世界情勢を意識してこの作品を創作しました。彼は、人間が持つ「怒り」「恐怖」「憎悪」といった負の感情を克服し、暴力ではなく対話と共存を重視する「コペルニクス的転回」の必要性を、ナウシカの姿を通して描こうとしました。
原作漫画:多層的な問いかけと倫理的ジレンマ
原作漫画では、環境問題だけでなく、生命倫理、科学技術の暴走、文明批判、権力と知識の独占問題など、より多層的なテーマが深く掘り下げられています。特に「生命を操る技術」がもたらす倫理的問題や、旧人類の計画に従うべきか否かという哲学的な問いが中心テーマとなり、「清浄と汚濁こそ生命だ」という二律背反を超えた生命観が示されます。宮崎監督が12年以上かけて描き続けた漫画には、映画には収めきれなかった深い思想と問いかけが込められているのです。
まとめ:二つの『ナウシカ』、それぞれの魅力を楽しむ
映画版と原作漫画の『風の谷のナウシカ』は、同じ題材から生まれながらも、全く異なる魅力を持つ作品です。映画版がシンプルで力強いメッセージを持つ完成度の高い作品であるとすれば、原作漫画はより複雑で奥深い物語世界を持つ大作と言えるでしょう。
どちらも観た俺の個人的「ナウシカ」作品イメージは
- アニメ⇒娯楽として頭を使わずに楽しめる
- 原作⇒ちょっと思想が強めで難しい、でも画力がスゲェ✨
てな感じですね、映画の方が分かりやすいからすんなり楽しめると思います。
漫画は考察とかそういう一つのテーマを考えるのが好きな人におススメかなと、ぶっちゃけ読んでも中身はよく分からなかったですwでも絵の構成とか線の書き方とか凄いと感じましたね🤔
映画を観て感動した方は、ぜひ原作漫画も手に取ってみてください。そこには映画では描かれなかった壮大な物語と、宮崎駿監督の真に伝えたかった思想が余すことなく表現されています。どちらかが優れているというものではなく、それぞれが異なる形で素晴らしい作品となっているのです。
原作漫画は全7巻構成で、講談社から出版されています。特に4巻から6巻にかけて物語が急展開を迎えるため、一気に読むのがおすすめです。映画の感動をさらに深める体験ができるはず!
ということで以上しょうきでした✨
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